一級建築士・田中ナオミさん/洗濯や衣替えに、日々の小さな幸せがある

2025/03/25 公開 

一級建築士・田中ナオミさん/洗濯や衣替えに、日々の小さな幸せがある

writer 石川理恵

おしゃれの舞台裏であるクローゼットを拝見しながら、服づきあいについてうかがう企画。第4回は、住宅設計者の田中ナオミさんの家を訪ねました。

元気を出したい日には、思い出の服を着る

▲中学時代のスカートを、カラータイツの大人コーディネートで着こなす田中さん。

たとえば気分が落ち込むときや、気合いを入れたい仕事のとき。田中さんは「自分を応援してくれる人」を思い出せるようなアイテムを身につけるそうです。取材の日に着てくれたのは、なんと中学時代にはいていたスカート。

「両親との思い出のあるスカートだから、どうにかして今も着ています。母のマフラーを巻いて出かけることも多いです。寒くて外へ出たくないような日でも、それを巻けば元気になれます」

▲「母はイギリス人で、私は年齢を重ねるに連れどんどん母に似てきているかも」
▲「バッグや小物はすべて、革作家の夫がつくったものを使っています」

たたんでしまう服は、奥行き30cmの棚が並べやすい

愛着を持ちながらおしゃれを楽しんでいる田中さんが、服の収納で大切にしているのは、アイテムや色がひと目でわかるように並べること。

自身で設計を手がけた自宅の寝室には、「ウォークインクローゼット」と「造りつけの棚」があり、夫婦で共有しています。

「ハンガーにかける服とたたんだ服とでは、奥行きのサイズが違うので場所を分けました。ハンガーにかける服は奥行きが58cmは必要だから、ウォークインクローゼットにかけています。

カットソーやニットやパンツなどのたたむ服は、奥行き30〜40cmぐらいの浅い棚のほうが、一目瞭然に並べられて選びやすいんです」

▲「左が夫で、この隣に私の棚があります。夫はすごくおしゃれで、持っている服の量も多く、しまい方もきれい」

リビングには大きな戸棚が置いてあり、マフラーやストール、バッグなどを収納。出かける前に、わざわざ寝室のクローゼットに戻らなくても、リビングでサッと選べるようにしています。

▲戸棚の右側に収納した巻きものは、夫婦で共有しています。左側にバッグを収納。
▲リビングの戸棚の対面には、ふだん使いのバッグ、帽子、上着などがかけられるハンガーラックも。

洗濯ものを干している景色をかわいくしたい

「晴れた日に洗濯物を干すと幸せな気持ちになる」という田中さん。毎日のことだから、洗濯物を干したときの眺めが気分の下がるものにならないように、道具を選んでいるそうです。

「このスタンドは、キャスターがついて動かせるのが便利なんです。洗濯機の横で干してからベランダに運んだり、室内に運んでからスタンドの上で洗濯物を畳んだり、雨の日には室内に干せるし、窓際において布団を干すこともできます」

▲愛用しているのは「6翼物干しスタンド」
▲洗濯ばさみも、使っていて楽しくなるものを選んでいます。
▲パジャマやタオルは積み重ねず、立てて収納。「しまうときには左側に並べ→使うときには右から取る」を繰り返し、まんべんなく使っています。
▲履いた靴は、玄関のへりにちょっぴり立てかけるように置き、湿気を飛ばしてから靴箱へ。

衣替えが好き。お気に入りの服と再会できるから

生活を楽しんでいる田中さんにとっては、衣替えも面倒なことではなく「わくわくすること」です。

「シーズンオフのケースの中にあるのは、自分のお気に入りの服ばかりだから、開けたときに『わー、この服あったなあ』って、再会するのはうれしいですよね」

一度に衣替えをするのは負担になるし、いまどきは季節の変わり目もはっきりしないので、必要に応じて「ちょっとずつ」進めています。

▲シーズンオフの服はロフトにしまってあり、「寒いな」「暑いな」と肌で感じたら、こまめに取りにいきます。
▲ハンガーにかける服を並べているウォークインクローゼットには、シーズンオフの服もカバーをかけて収納。

好きな服を長く着続けながらも、クローゼットの中がギューギューになると、服がヨレヨレになるし、選びにくくなってしまうから、「収納スペースにおさまる範囲の量を持つ」と決めているそうです。

「着たときに『かっこいいか』どうかが大事だから、サイズが合わなくなったり、みすぼらしくなったりしたら手放します。

ファッションの好みは10代の頃からほとんど変わってないけれど、年を重ねるとパブリックなシーンでもそこまでカチッとしていなくても許されるし、年齢とともにどんどんラクチンになっているかもしれません。

自分がにこにこ笑顔でいられるようなおしゃれができたら、いいのかなと思っています」

▲KINOTTO(キノット)のワンピースタイプのエプロンにカットソーを合わせるのが、定番スタイル。色違い、生地違いで持っていますが、ビビッドな黄色が「いまの気分」です。

撮影/山本倫子
取材・文/石川理恵

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プロフィール

田中ナオミ(たなかなおみ)

一級建築士

女子美術短期大学造形科卒業後、エヌ建築デザイン事務所、藍設計室を経て、田中ナオミアトリエ一級建築士事務所を設立。生活者としての視点を活かした住宅設計を数々手がける。近著に『60歳からの暮らしがラクになる住まいの作り方』(主婦と生活社)、『がんばりすぎない家事の時短図鑑』(エクスナレッジ)があるほか、YouTube「まちいえチャンネル」でも住まいや収納にまつわる情報を発信している。Instagram:@naomitanaka_ntlab

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