writer 石川理恵
人それぞれの「自然とのつながり」をテーマに、この連載ではベランダや庭のあるお家を訪ねます。
第6回目は、借景の緑に包まれながら暮らしている、編集者の加藤郷子さんを取材。
植物を育てるのが苦手という加藤さんの、インテリアグリーンを楽しむ様子もうかがいました。
住まい選びは「眺め」で決めたい
▲仕事の山を越えた後などに、明るいうちからベランダでひとり飲みをするのが何よりの贅沢時間。小上がり感覚で置いているデッキは、楽天市場で見つけたキットを組み立てたもの。
霧雨を浴びて、みずみずしく青々と茂る木々。取材の日は、降ったりやんだりのあいにくのお天気でしたが、ベランダの向こうに広がるしっとりと深い緑は心が静まるような美しさで、雨は自然の恵みなのだと感じさせてくれました。
「家に帰ってきたとき、この景色が見えるとホッとします」と話す加藤さん。窓からの眺めが抜けているかどうかが、住まい選びの第一条件だったそうです。
「私は田舎育ちで、自然が大好きってわけではなかったけれど、いざ東京の街中に住んでみたら、空や緑が見えていない家に住むのは息苦しかったんです」
フリーランスで働く加藤さんにとって、家は仕事場でもあります。現在のマンションに夫婦で暮らしはじめて、4年が経ちました。在宅仕事の日は緑を感じながらパソコンに向かい、息抜きしたいときには窓辺に置いた椅子から空を眺め、仕事を終えたらベランダに出て、一息してから夜ごはんの支度へ。借景のおかげで気持ちを切り替えながら一日を過ごしています。
▲ワイドなリビングの、どの位置から借景を眺めようかと、時々模様替えを楽しんでいるそうです。現在は左側にダイニングテーブルを、右側に仕事机を配置。窓際にもひとり掛け椅子を置き、空を眺めたいときに腰掛けています。料理に使えるハーブやリーフをベランダ栽培
▲タイ料理の「ラープ」と、「トートマン」をアレンジしたさつま揚げ。どちらにもコブミカンの葉を入れると、それらしい味わいに。わざわざ買うのはたいへんだけれど、よく使いたいハーブやリーフを、ベランダで育てています。ベランダには、ハーブや実のなる木、モッコウバラなどが並んでいます。
「私は植物をことごとく枯らしてしまうので、面倒をみるのは夫の担当です。イチョウ、クワ、レモンの木は、前に住んでいた家から育てているものだから10年以上の付き合いだと思います。イチョウは、『銀杏を植えたら芽が出てきた』といって、友だちがくれました。冬には葉っぱがぜんぶ落ちて、春にはまた新芽が出てくるところが、かわいいんですよ。去年、苗で買ったコブミカンは、葉っぱをサラダや炒め物に混ぜるとエスニック料理らしい香りに仕上がります」
シソ、パクチー、バジルなどは一年草として、シーズンが終わるとお片づけ。大きな不織布のバスケットに土を戻し、土のリサイクル材を混ぜて翌シーズンに備えます。
▲左から、ローズマリー、ハーブティによく使うレモンバーベナ、レモンの木、シソ、ミント。▲左は友だちがくれたイチョウの木、右はコブミカン。その他にも、パクチー、オリーブ、他の苗を買ったらおまけにもらったズッキーニなどを育てています。
- プロフィール
出版社勤務を経て、フリーランスに。料理、インテリア、手仕事など、暮らしまわりの記事を編集、執筆。最近では『趣味どきっ! 染めものがたり』(NHK出版)、『北欧の日常、自分の暮らし』(桒原さやか著/ワニブックス)を手がけた。趣味はおいしいものを食べ歩くことと、アート巡り。instagram:https://www.instagram.com/chocozai/