writer 石川理恵
人それぞれの「自然とのつながり」をテーマに、この連載ではベランダや庭のあるお家を訪ねます。
第7回目に登場するのは、編集者であり、旅にまつわる著書を持つ佐々木素子さん。
小さなベランダが食生活を豊かにする様子を取材しました。
「暮らし」をもっと味わいたくて、郊外へ
▲柵に吊り下げるタイプのテーブルは「イケア」で購入。ベランダが小さくてもこれならばカフェコーナーが作れます。黒いプランターや人工芝は100円ショップで買いました。かつて雑貨の雑誌編集部で働いていた佐々木さんは、かわいい物が大好き。ひとり暮らしの部屋には中国茶器やティーポット、ベトナムの食器、アルミの道具、旅先で見つけた置物などがずらりと並んでいます。
「でも、最近は、買い物より自然が恋しくて」
数年前、暮らしをスローダウンさせようと、都内から郊外へ引っ越しました。現在の住まいは、農家の直売所が近くて新鮮な地元野菜を買えることや、2DKのゆとりある間取り、窓から光の入るキッチンが気に入って選んだマンションです。ガーデニング歴25年の佐々木さんにとって、植物を育てられるベランダがあったことも、決め手のひとつに。
▲DIYした棚に、コレクションのポットと、その合間に多肉植物などを並べています。▲左の写真、バタフライの鏡はオランダで買ったもので、中央に花がさせるようになっています。右の写真、どんどん芽を出すサボテン。小さなベランダを、最大限に活用
▲空間を有効に使うために、棚を置いて植物を並べています。緑によく映えて、自分の好きな色だから、花の色は白か黄色に揃えているのだそうです。この黄色の花は、ペチュニア(レモンスライス)。▲左の写真、友人の山から抜いてきた山椒です。右の写真、黒いポットに入っているのはイタリアンパセリと、最近買って気に入っているスープセロリ。その下は手持ちのカゴに紐を通して、ディルとパクチーを並べています。ベランダでは、多肉植物と、少しの花たち、そして料理に使いたいものを育てています。
「スーパーでハーブを買っても使い切れないことが多くて、それならば……と、育てるようになりました。大葉は毎年、初夏に元気な苗を2株ぐらい買います。ひと夏の間は充分収穫できるし、料理のたびに摘み立てを食べられます」
棚の奥にヒョロヒョロと育つ小ネギは、スーパーで買った小ネギの根っこを切り落として植えたもの。その横にある山椒の木は、友人の山へ竹の子ほりに出かけた際、引っこ抜いてきたものです。もらったときは爪楊枝ほどの大きさだったのが、今では30cm以上の背丈に成長しています。
▲ベランダで野菜を干すと、うまみが出て、保存もきくようになります。ミニトマトはオリーブオイルに漬けて保存し、パスタソースにしたり、パンに練りこんだり、ケークサレやピザのトッピングにも。大根の皮はお味噌汁に、レモンはお茶に、きのこ類はスープや炊き込みご飯に入れます。ズッキーニはスープか、チゲに入れてもおいしいそうです。
▲プランターの大葉はこぼれ種では育たないので、毎年、大きめの苗を買って夏の間の収穫を楽しみます。
- プロフィール
旅、料理、手芸、インテリアをテーマに編集と執筆を手がける。著書に『マーケットをめぐるおいしい旅 ベルギーへ』(イカロス出版)があるほか、編集ユニット「auk(オーク)」として『「好き」を追求する、自分らしい旅の作り方』(誠文堂新光社)などを出版。Instagram:@mogu_travel