第7回 アクセサリー作家 山本亜由美さん/旅の途中もあとも。全力投球で楽しむ

2024/04/11 公開 

第7回 アクセサリー作家 山本亜由美さん/旅の途中もあとも。全力投球で楽しむ

writer 加藤郷子

非日常がつまっている「旅」と、日常があふれている「暮らし」。

そんな旅と暮らしの関係を、暮らしをのぞかせていただきながらひもとく連載。

今回はアクセサリー作家、山本亜由美(やまもとあゆみ)さんのお話。花、植物、自然が、旅のテーマになることが多く、その経験のすべてが、作品づくりにも、暮らしにも影響を与えています。

どこへ行っても、気になるのは植物

▲どの旅先でも植物が気になる山本さんだけあって、家にも花や鉢植えがいっぱい。

「旅の楽しみを知ったのは、30代半ばから。それ以前は、子どもの頃の家族旅行も含め、あまり行っていない気がします」と振り返る山本さん。

仕事にも気持ちにも余裕が出てきた35歳を過ぎたころから、北海道、鳥取、島根、大阪、京都、そして会津など、あちこちへ。コロナ禍で行けなくなっていましたが、最近、解禁。先日は香川に旅をしました。

国内旅は、展示のお誘いがきっかけになることがほとんど。山本さん自身が旅先を決めることは、あまりないのだそう。作品をつくって送るだけでなく、できるだけ現地に赴いて店頭に立ち、お客さまとの交流を深めるのが山本さん流の展示会への参加の仕方。

つまり仕事の出張ではありますが、展示の合間や前後に近辺を旅し、しっかりその土地を満喫してくるので、これはやっぱり、山本さんの旅の形のひとつです。

定例になっている展示会もあるので、何度も通う街もちらほら。「毎回来ていただくお客さまたちからおすすめをうかがったり、ときには案内していただいたり。主催者のかたにあちこち連れて行ってもらうこともあります」

どこを旅しても、山本さんがいちばん気になるのは、自然。山や川、森など雄大な場所はもちろん、街を歩いていても目がいくのは、個人宅の庭先だったり、観光地の植栽だったり、公園の片隅の草花だったり。キョロキョロしながら見て回るのだとか。

「同じ植物でも地方によって生え方が違いますし、東京と違って少し電車に乗れば手つかずの里山の風景が広がります。珍しい花が咲いてないかな? と目を皿のようにしています(笑)。海外でも同じ。街路樹や壁のツタにも、その国らしさを感じますね」

海外旅は、友人に便乗することが多いのだそう。例えば、パリに行く友人がいたら、その時期ならきっと桐が咲いているからと同行を決め、さらにクロッカスの時期だからスイスもくっつけよう、という具合に旅程ができあがります。

山本さんにとって、いつだって旅の隠れテーマは『植物』。旅で見たものは、植物をモチーフにすることが多いアクセサリーづくりや、ふんだんに植物を使った展示空間のイメージの源泉になっています。

▲自宅のダイニングテーブルの上に巨大なドライの植物を飾っている。

「同じ植物でも地方によって生え方が違いますし、東京と違って少し電車に乗れば手つかずの里山の風景が広がります。珍しい花が咲いてないかな? と目を皿のようにしています(笑)。海外でも同じ。街路樹や壁のツタにも、その国らしさを感じますね」

海外旅は、友人に便乗することが多いのだそう。例えば、パリに行く友人がいたら、その時期ならきっと桐が咲いているからと同行を決め、さらにクロッカスの時期だからスイスもくっつけよう、という具合に旅程ができあがります。

山本さんにとって、いつだって旅の隠れテーマは『植物』。旅で見たものは、植物をモチーフにすることが多いアクセサリーづくりや、ふんだんに植物を使った展示空間のイメージの源泉になっています。

旅をとことん満喫し、日常の暮らしでも旅を楽しむ

旅先では、たくさんの自然を見るのはもちろん、出会った魅力的なものを逃さず購入。例えば、器だったり民芸品だったり。その土地らしいものということもあれば、たまたま旅先で出会ったというだけで、まったく違う土地のものということも。

▲ラオスで出会った僧侶のマリオネット

「食材を段ボールいっぱいに買ってくることもあります。東京だと特別な百貨店でしか買えない高価な野菜が道の駅で破格値だったり、その土地にしかない珍しい魚介を見つけたり。調味料もその土地々々で魅力的なものがありますよね」

そんな食材を使って現地の味を再現することもあれば、オリジナル料理へと発展させることもあります。

▲島根で出会ったおいしいみりんは、山本家の定番調味料に。柑橘の絞り汁と合わせてゼリーをつくることにもはまったそう。

また、旅先のレストランで食べた料理さえも、山本さんにとってはおみやげ。

「クレソンをすき焼きに入れることは京都の料理屋さんで、小皿に山盛りにして提供するスタイルはベトナムの食堂で知って、真似をするようになりました」

買ってきた野菜は食べるだけでなく、形や色がいいなと思ったものは飾ることも。山本さん宅に置かれると、野菜がまるでオブジェ。インテリアを盛り上げるアイテムになってくれています。

▲オブジェのように飾っているかぼちゃ。ひょうたんや洋梨を飾っていたことも。

アクセサリーを制作するためのパーツを旅先の蚤の市や、アンティークショップで見つけることもあるのだそう。そう思うと、旅先で見て、食べて、買ったものすべてが、山本さんの仕事も暮らしも、日々更新してくれているようです。

「旅先のことを余すことなく知りたいって思っていますし、帰ってきたあとも余すところなく、満喫したい」

作品づくりも展示会のイスタレーションも、プライベートのおもてなしまで、何事も全力投球タイプの山本さん。やっぱり旅も全力投球。旅先も旅のあとも、思いっきり満喫し尽くしているのです。

▲台湾、上海、ハノイ、ニューヨーク、パリ、京都、金沢などで購入した器。テイストがバラバラなようでいて、山本さんらしさを感じさせる。
▲旅先で購入したシャンデリアパーツやタッセル、布、元の用途はわからないアンティークの品々。どれもアクセサリーの材料として使いたいと思って購入。
▲ウズベクの民族衣装が多数掲載されている美しい本は、トルコで入手。

旅のおすそわけ写真①

▲ヨーロッパを旅したときは、外壁の植栽に注目。「お国柄や、その街柄が現れておもしろいです」

旅のおすそわけ写真②

  • ▲左上:クロッカスを見にスイスまで遠征 右上:桐の花が咲いている季節ということでパリ旅を決めた 左下:パリのマルシェでは花が横向きに寝かされていることにびっくり! 右下:パリで見かけた、ナンジャモンジャと思われる木。5月だったから見事な花!

    旅のおすそわけ写真③

    ▲ラオスの寺院のモザイクタイルの壁。よく見るとモチーフに植物がたくさん! 

    撮影/松元絵里子(山本亜由美さん提供分以外)
    取材・文/加藤郷子


    プロフィール

    山本亜由美(やまもとあゆみ)

    アクセサリー作家

    植物や動物をモチーフにしたアクセサリーで独自の世界観を表現。展示空間のインスタレーションでも多くの人を魅了する。料理上手としても知られ、そのおもてなしの食卓は、おいしいだけでなく、ヴィジュアルの美しさにも定評がある。Instagram:@leonardo_abc_

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