第3回 スタイリスト・脇もとこさん/家のどこにいても、植物が見えるように。

2023/04/21 公開 

第3回 スタイリスト・脇もとこさん/家のどこにいても、植物が見えるように。

writer 石川理恵

人それぞれの「自然とのつながり」をテーマに、この連載ではベランダや庭のあるお家を訪ねます。

第3回目に登場するのは、スタイリストであり、参鶏湯研究家でもある脇もとこさん。

植物に囲まれながら、健やかに暮らす様子を取材しました。

半屋外のベランダは、もうひとつのリビング

▲パソコン画面に集中しがちなオンライン会議も、ベランダに出て外気にふれ、鳥のさえずりをBGMにしていると、ささやかな自然を感じて心身のバランスがとれるのだそうです。

▲多肉植物の寄せ植えは、窓辺に置けるサイズのプランターを「百暮」でオーダーメイド。階段の途中に植物を置くと、ちょうど目線の高さに。


脇もとこさんは一軒家に夫、娘、愛犬フォンドと3人+1匹暮らし。この家を建てた12年前、ベランダをリビングの延長のように使いたくて、屋根の内側を板張りにしました。

休日のブランチ、仕事の合間のお茶、夕方からワイン晩酌——。くつろぎたいときにはベランダで過ごすのが家族の日常です。

入居時に植栽したミモザの木は、脇さんの身長くらいの背丈だったのが、今では家を覆うほどに成長。小木だったジュンベリーも、2階の窓から手が届く大きさに育ちました。実をつけるころには鳥がいっぱい遊びにきて「キッチンからメジロが実を食べる様子が見えるんです」と、うれしそうに話す脇さん。

「もともと植物は好きでしたけれど、この家に住むようになって、木々や花々が生き生きしているのを見ているうちに、だんだんとつき合い方が深まりました。今では暮らしになくてはならない存在。どこにいても植物が視界に入るように、家のあちこちにも花や植木を置いています」

この土地は以前農地だったそうで、「土がいいのか想像以上に木々が育ってびっくりしました」と脇さん。

▲コンポストは、フェルトバッグタイプの気軽なものから始めて、現在は「キエーロ」を使っています。土が増えないので、堆肥の使い道に困ることがないとか。

▲愛犬フォンドも、外の緑を見ながら寝そべるのが大好き。コウモリランは、冬の間は室内で越冬し、春から秋だけベランダに出しています。

植物療法でセルフケア

▲ハーブティは、手軽に取り入れられる植物療法。そのときの自分の体に合わせてブレンドし、一日に何度も飲んでいます。


10年ほど前、娘のリクエストをきっかけに脇さんは参鶏湯を作るようになり、レシピを探求。その味が評判となって、ワークショップで教えたり、スパイスセットを販売したり、仕事として取り組むようになりました。漢方や薬膳料理についても学ぶうち、薬草にも興味を持つように。

「コロナ禍で時間ができたときに、ずっと気になっていたスクールのオンライン講座で、植物療法について勉強したんです。そうしたら、ハーブや精油の効果を実感することばかりで、『植物ってすごい!』とあらためて感心しました。身動きもできないのに、他の命を奪うことなく、その場所で生き、アロマで人を癒してくれる。生物としてもはや尊敬しています」

▲参鶏湯は消化がよく、体を温め、漢方でいう「気血水」を補ってくれる薬膳料理。脇さんが運営する「参鶏湯研究所」では、本格的な参鶏湯を手軽に食べられるように、切り身の鶏肉でも作れるスパイスセットや、直火にかけられる器を販売しています。


▲参鶏湯の副菜にかかせないキムチもお手製。ベランダで干した野菜を使うと、よりおいしく仕上がるそうです。

体の声に耳を傾け、身近な食で心身を調える

▲春ごろから一年草のハーブをプランター栽培。今年は、料理によく使うローズマリー、イタリアンパセリ、パクチー、酵素シロップに使うミントなどを育てます。
▲手作りのチンキ。左から生の月桃、ドライの月桃、ラベンダー、ユズの種で作ったものです。お風呂に入れたり、化粧水にしたり。


ハーブティを飲むとき、大切にしているのは体の声を聞くこと。ブレンドするときだけでなく、飲んだあとにも、自分がどんな気持ちになったかを感じ取ります。それは食事においても同様です。

「たとえば朝ごはんは、基本、体にやさしいものを食べますが、毎日同じではなく、体の状態に合わせています。胃の消化が落ちていると感じたらおかゆ、前日に油っこいものを食べていたらコールドプレスジュース。エネルギーを使いそうな日は、納豆ごはんにお味噌汁で腹持ちのいいものを食べることも」

脇さんの暮らしのテーマはセルフケア。息抜きにベランダへ出ることも、植物のチンキで肌をうるおすことも、自分の体に意識を向ける営みです。

▲薬膳や植物療法を取り入れながら、日々、台所にあるもので体を調えています。

▲おかゆはごはんを湯でグツグツするだけ。かぶの浅漬けは魚醤であえただけ。おかゆのトッピングは梅干しと、お味噌汁のだしがら(昆布とかつお節)にじゃこを加えてごま油で炒めたふりかけが定番。脇さんの料理はシンプルな味つけでなんとも合理的でした。

撮影/川しま ゆうこ
取材・文/石川理恵

プロフィール

脇もとこ(ワキモトコ)

スタイリスト・参鶏湯研究家

スタイリストとして広告などを手がけるほか、オンラインショップ「参鶏湯研究所」にて、オリジナルの参鶏湯やスパイスセットを販売。また、漢方養生指導士、植物療法士の資格を持ち、薬膳やハーブ療法のアドバイスを行う。instagram:@motokowaki

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