writer 石川理恵
人それぞれの「自然とのつながり」をテーマに、この連載ではベランダや庭のあるお家を訪ねます。
第3回目に登場するのは、スタイリストであり、参鶏湯研究家でもある脇もとこさん。
植物に囲まれながら、健やかに暮らす様子を取材しました。
半屋外のベランダは、もうひとつのリビング
▲パソコン画面に集中しがちなオンライン会議も、ベランダに出て外気にふれ、鳥のさえずりをBGMにしていると、ささやかな自然を感じて心身のバランスがとれるのだそうです。▲多肉植物の寄せ植えは、窓辺に置けるサイズのプランターを「百暮」でオーダーメイド。階段の途中に植物を置くと、ちょうど目線の高さに。
脇もとこさんは一軒家に夫、娘、愛犬フォンドと3人+1匹暮らし。この家を建てた12年前、ベランダをリビングの延長のように使いたくて、屋根の内側を板張りにしました。
休日のブランチ、仕事の合間のお茶、夕方からワイン晩酌——。くつろぎたいときにはベランダで過ごすのが家族の日常です。
入居時に植栽したミモザの木は、脇さんの身長くらいの背丈だったのが、今では家を覆うほどに成長。小木だったジュンベリーも、2階の窓から手が届く大きさに育ちました。実をつけるころには鳥がいっぱい遊びにきて「キッチンからメジロが実を食べる様子が見えるんです」と、うれしそうに話す脇さん。
「もともと植物は好きでしたけれど、この家に住むようになって、木々や花々が生き生きしているのを見ているうちに、だんだんとつき合い方が深まりました。今では暮らしになくてはならない存在。どこにいても植物が視界に入るように、家のあちこちにも花や植木を置いています」
この土地は以前農地だったそうで、「土がいいのか想像以上に木々が育ってびっくりしました」と脇さん。▲コンポストは、フェルトバッグタイプの気軽なものから始めて、現在は「キエーロ」を使っています。土が増えないので、堆肥の使い道に困ることがないとか。
▲愛犬フォンドも、外の緑を見ながら寝そべるのが大好き。コウモリランは、冬の間は室内で越冬し、春から秋だけベランダに出しています。
植物療法でセルフケア
▲ハーブティは、手軽に取り入れられる植物療法。そのときの自分の体に合わせてブレンドし、一日に何度も飲んでいます。
10年ほど前、娘のリクエストをきっかけに脇さんは参鶏湯を作るようになり、レシピを探求。その味が評判となって、ワークショップで教えたり、スパイスセットを販売したり、仕事として取り組むようになりました。漢方や薬膳料理についても学ぶうち、薬草にも興味を持つように。
「コロナ禍で時間ができたときに、ずっと気になっていたスクールのオンライン講座で、植物療法について勉強したんです。そうしたら、ハーブや精油の効果を実感することばかりで、『植物ってすごい!』とあらためて感心しました。身動きもできないのに、他の命を奪うことなく、その場所で生き、アロマで人を癒してくれる。生物としてもはや尊敬しています」
▲参鶏湯は消化がよく、体を温め、漢方でいう「気血水」を補ってくれる薬膳料理。脇さんが運営する「参鶏湯研究所」では、本格的な参鶏湯を手軽に食べられるように、切り身の鶏肉でも作れるスパイスセットや、直火にかけられる器を販売しています。
▲参鶏湯の副菜にかかせないキムチもお手製。ベランダで干した野菜を使うと、よりおいしく仕上がるそうです。撮影/川しま ゆうこ
取材・文/石川理恵
- プロフィール
スタイリストとして広告などを手がけるほか、オンラインショップ「参鶏湯研究所」にて、オリジナルの参鶏湯やスパイスセットを販売。また、漢方養生指導士、植物療法士の資格を持ち、薬膳やハーブ療法のアドバイスを行う。instagram:@motokowaki